医院名 |
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なかしま脳神経外科クリニック |
院長 |
中島 利彦 |
住所 |
〒502-0929 岐阜市則武東2丁目15-18 |
診療科目 |
脳神経外科 リハビリテーション科 脳神経内科 専門外来(頭痛外来、もの忘れ外来、禁煙外来) |
診療時間 |
9:00 - 12:00 16:00 - 19:00 休診日:木曜午後・土曜午後・日曜・祝日 |
電話番号 |
058-215-8668 |
当院を受診される患者さんの中には、自分の症状が脳卒中の「まえぶれ(前兆)」ではないかと心配して来院される方が少なくありません。
脳卒中になって障がいが残ったり、寝たきりになったりするのではないかという不安をいだいている方が、大勢いらっしゃいます。
たしかに、巨人軍の長嶋監督やサッカー日本代表のオシム監督のように、脳卒中の後遺症として半身まひが残ることがしばしばあります。
しかし、脳卒中とひとことで言っても、くも膜下出血、脳出血、脳梗塞などいろいろあります。
これらの病気について簡単に説明を!と言いたいところですが、これらの病気の中にもさまざまな異なる病気があるため、残念ながらそう簡単には説明できません。
日本、韓国、中国について簡単に説明を!と言っても、日本には北海道もあれば東京や沖縄があるわけで、簡単には説明できないのと同じことです。
ということで、脳卒中について予防という観点からお話しさせていただこうと思います。
くも膜下出血は、脳卒中の中でも命を落とす確率が最も高い病気です。
新聞やTVなどで、有名人がくも膜下出で亡くなられたと報道されることがよくあります。
くも膜下出血は脳出血や脳梗塞に比べると比較的若い人に多いため、働き盛りの人が突然くも膜下出血になって、命を落としたり障がいが残ったりして復職が困難になるため、本人ばかりでなく家族にも重い負担がのしかかってきます。
大部分のくも膜下出血は、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)という脳の血管の病気が原因でおこります。
脳の主幹動脈と呼ばれる直径数ミリの血管の壁に弱い所あり、血管の中の圧力に耐えられず、風船のように膨らんでしまう病気が脳動脈瘤です。
膨らんだ部分が破裂するとくも膜下出血になります。
脳の血管が風船のように膨らんでも通常症状はまったくありません。
そんな病気があるとはだれも気付かずにいて、ある日突然脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血がおきるというわけです。
ひとたびくも膜下出血が起きると大変なことになるわけですから、あらかじめ脳の血管を調べて脳動脈瘤という病気が見つかれば、くも膜下出血になる前に治療をしてくも膜下出血が起きないようにすればよいのです。
一昔前までは脳の血管を調べることは容易ではありませんでしたが、最近ではMRI検査をすれば脳の血管に脳動脈瘤があるかどうかはすぐにわかります。
MRIを使った脳ドックがくも膜下出血予防のためには最も有効な方法なのです。
脳出血は、脳の中を走っている非常に細い血管がもろくなり、血管の中の圧力(血圧)に耐えられなくなって破裂するためにおこります。
まさに脳の血管が切れるという表現のとおりです。
くも膜下出血は脳の表面にある血管から出血するため、出血は脳の表面に広がっていきますので、通常くも膜下出血そのものが脳を破壊したりはしません。
これに対して、脳出血は出血が始まると、どんどん周囲の脳を破壊して出血が大きくなってゆくため、必ず何らかの脳の損傷が残ります。
この結果後遺症が残るわけですが、後遺症は出血がおこった場所によって、手足の麻痺であったり、言葉の障害であったり、ふらつきであったりとさまざまです。
脳の血管がもろくなって脳出血がおこるのですから、脳の血管がもろくならないようにすれば脳出血が予防できます。
脳の血管をもろくする大きな原因は高血圧であると考えられています。
ですから高血圧にならないように日頃から塩分控えめにしたり、高血圧になったら躊躇せず血圧の治療を開始したりすることが脳出血の予防として重要です。
脳の血管がもろくなる原因はこの他にも加齢など血圧以外の原因もありますので、脳出血を完全に予防することはできません。
しかし、血圧に注意して日頃から生活することは、脳出血以外のさまざまな脳の血管の病気の予防の他に、心臓や腎臓の健康を保ことにもつながりますので、血圧にはくれぐれもご注意いただきたいと思います。
一昔前までは、脳卒中と言えば脳出血と言っても良いほど日本では脳出血になる人の割合が多かったのですが、人口の高齢化や食生活の欧米化などのために、最近では脳梗塞になる患者さんが増えています。
脳梗塞は脳の血管がつまって血液が流れなくなるために、血液の供給が止まった脳の一部が死んでしまう病気です。
血液の流れが完全に止まると、5分から10分程度で脳にある神経細胞は死んでしまうと言われていますが、脳の血管の構造は複雑で、ある血管がつまるとそこから先には血液がまったく流れて行かなくなる所もあれば、別の血管では血管がつまっても、つまったところより先のところへ他の血管から血液が流れ込むような構造になっていて、たとえ血管がつまっても脳梗塞にならないような部位もあります。
ですから脳梗塞と言っても、単に脳の血管がつまる病気ですと一言では片付けることはできません。
さらに、血管がつまるといっても脳の血管の中で血液が固まってしまう場合や、心臓にできた血液の塊が脳血管に流れ込んで脳の血管を塞いでしまう場合など、原因はさまざまです。
脳の血管がどこでどのようにつまるかによって予防法は異なります。
“敵を知り己を知れば百戦危うからず”です。それでは脳梗塞にはどんなタイプがあるのでしょうか?
脳梗塞は、脳の血管が血の塊によってつまってしまうため、脳に血液が流れなくなってしまう病気です。
血のかたまりが脳の血管の中にできる場合と、心臓の中にできた血の塊が血液の流れによって脳の血管に流れ込んで血管をふさいでしまう場合とがあります。
前者を脳血栓症とよび後者を脳塞栓症と呼んでいます。
心臓の中で血の固まりができる病気としては心房細動という病気が代表的です。
「平成」の元号を発表した小渕元総理や、巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄さんは、ともに脳塞栓症になりました。
心臓でできる血の塊は大きいので、脳の血管に流れ込むと脳の血管の中でも太い血管がつまってしまいます。
太い血管がつまると脳の広い範囲に血液が流れなくなってしまうため、脳塞栓症は脳梗塞の中でも重症になることが多いのです。
小渕元総理はこのためにお亡くなりになってしまいましたし、長嶋監督も右半身のマヒや言語障害が後遺症として残りました。
高齢化社会になり心房細動という不整脈のある方が増えています。
そのため脳塞栓症になる患者さんも増えてきています。
心房細動によってできた心臓の中の血のかたまりが脳に流れ込まないようにすることはできませんので、心臓の中に血のかたまりができないようにする薬を内服していただくことで、脳塞栓症の予防ができます。
薬としては現在ワーファリンという薬しかありませんが、この薬は効き方が人それぞれ異なりますし、納豆をたべたりすると薬の効果がなくなってしまうなど、扱いにくい薬です。
最近ワーファリンより使いやすいプラザキサという薬が認可されましたが、ワーファリンに比べ値段が高いところが問題です。
薬の性質を良く知っている専門医と相談しながら、決められた通りに薬を内服していただけば、脳塞栓症の予防につながりますので、心房細動を指摘された方は必ず循環器や脳神経の専門医に相談してください。
脳の血管の中で血液がかたまるために血管がつまってしまうのが脳血栓症です。
脳の動脈は直径が5mm程から1mm以下のものまで太さはさまざまです。
心臓に近いほど太く、心臓から離れるにつれて血管は枝分かれしながら徐々に細くなっていきます。
木の幹から枝の先まで、徐々に細くなってゆく様子を思い出していただくとよいかもしれません。
脳の血管の比較的太い部分では、血管の壁にコレステロールがたまり血管の内径が狭まることがあります。
年齢とともに多かれ少なかれ起こる現象ですが、糖尿病や高脂血症があると、コレステロールが血管の壁にたまりやすくなります。
コレステロールがたくさん血管の壁にたまってくると、血液に接している血管の壁が変化して血液のかたまりができやすくなってしまいます。
直径が1mm以下の細い動脈の壁にはコレステロールがたまることは少ないのですが、血管の壁を作っている細胞自体が加齢や高血圧によって壊れていってしまうため、血液がかたまりやすい状態になってしまうことがあります。
比較的太い血管ではコレステロールが、細い血管では高血圧が原因で脳梗塞がおこると考えられます。(原因はその他にもありますのでコレステロール少なくても、血圧が低くても、脳梗塞がおきることはありますが・・・)
血管の中で血液が固まるのを防ぐ薬として、脳血栓症の予防には抗血小板剤という薬が使われます。
血液をかたまらせる働きのある血小板の機能を抑制する薬で、3種類ほどが使われています。
それぞれ特徴のある薬ですので、専門医は患者さんの病状に合わせて処方を行っています。